第82章

空気がどこか妙だった。けれど大島莉理はすぐに気まずさを感じなくなる。玄関先で阿部茜がそろそろと顔を出し、こちらの様子をうかがっていたからだ。思わず笑いが漏れる。

「おばさん……」

田中辰哉もそれに気づき、苦笑いする。

「うちの母さん、ああいう人なんだ。気にしないで」

だが大島莉理は、むしろ面白がっていた。

「逆に可愛いと思う。せっかく帰ってきたんだし、とりあえず中に入ろう」

「分かった」

田中辰哉は体を引いて道を譲り、彼女が先に通るのを見送る。続いて、長い脚で落ち着いた足取りのまま後ろについた。

リビングへ戻り、座って息をつく間もなく、阿部茜が追い立てるように言う。

「若い...

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